или ещё почитать???【鶴のお礼参り】
土方 『いいか、風間。恩返しをするにあたって一つだけ言っておくことがある。
俺たちがこの部屋にいる間、決して中を覗くんじゃねぇぞ。わかったな』
パタン(襖を閉める
沖田 『はぁ。やれやれ、ここまではうまくいってみたいですね』
斉藤 『そうだな。とりあえず邸への潜入は成功したといっていいだろう。
それに幸い風間はまだこちらの目的に気づいていないようだ』
原田 『だけどまぁ、ここからが本番だろう。敵の懐に入り込んだといってもまだ油断できねぇぜ』
土方 『原田の言うとおりだ。総司!』
沖田 『ここにいますよ』
土方 『斉藤!』
斉藤 『準備はできています』
土方 『原田!』
原田 『おうよ!こっちも問題ねぇ』
土方 『平助!』
藤堂 『いつでもいけるぜ!』
土方 『よし!ちゃんとそろってるみてぇだな。じゃあ今から改めて作戦にはいる。平助、
今回の作戦の目的が何なのかわかってんだろうな』
平助 『ちょ・・・ちゃんとわかってるって!なんで俺だけ名指しで聞くんだよ!!
俺達がこうして風間の家に潜入した理由・・・それはこれまで数多くの同士たちを倒してきた風間に』
全員 『『お礼参りをするためだ!』』
これは新撰組やら鬼やら幕末やらとはあまり関係のない昔々の話。
あるところに山で獣や鳥を狩って生活している【風間】という名の大層身勝手な性格の猟師がいたそうだ。
ある日、その風間が仲間と山へ狩りに行った帰り道のこと・・・
風間 『ふん。今日の狩りの成果はイマイチだったな。不知火の勝ち誇った顔を思い出すだけで腹が立つ。
そもそも俺は刀で天霧は素手だというのに奴だけ銃を使って獲物を狩る時点で不公平だお思うが・・・。』
土方 『そろそろ風間の奴が通りかかるぞ!準備はいいか?』←小声です
沖田 『鶴の鳴き声でしょ?わかってますって土方さん♪ええっと・・・』
沖田 『カーカー』
原田 『総司!それは鶴の声じゃねぇだろ!!』
風間 『ん?気のせいか??なにやら鳥の鳴き声らしきものが聞こえたが・・・』
藤堂 『でもよぉ、だったら鶴の鳴き声ってどんな声なんだ?』
沖田 『さぁ?「チュンチュン」とか適当に鳴けばいいんじゃないの?』
斉藤 『それは雀だ。俺も聞いたことはないが・・・鶴の一声ということわざもある。
やはりもっと大きな鳴き声ではないか?』
原田 『じゃあ、あれか?キジみたいに「ケーンケーン」とかか?』
土方 『おい!もたもたしてたら計画が台無しになっちまうだろうが!もういい!!
なんでもいいからさっさと鳴いて奴の気をひくぞ!!』
全員『コッケコッコー チュンチュン ワンワン カッコーカッコー ケーンケーン』
風間 『なんだこの不快な不協和音は!正直関わり合いになどなりたくないが仕方あるまい。
行ってみるか。』
原田 『ケーンケーン』
土方 『コッケコッコー』
沖田 『チュンチュン』
藤堂 『カッコーカッコー』
斉藤 『ワンワン』
風間 『ん?あそこで罠にかかって鳴いているのは鳥か・・・どうやら鶴か何かのようだが』
原田 『おぉしまったー。俺達としたことが羽を休めている最中に罠にかかっちまったー!』(棒読み
斉藤 『いや待て皆。あっちを見るんだ。ちょうどいいところに人の良さ…良さ……そうな気がしなくもない
若者が通りかかったではないか』(棒読み
藤堂 『おい、そこの通りすがりの風間!この、罠に掛かった可哀想な鶴……
というかオレたちを助けてくれ!いやむしろ助けろ!』
風間 『ほう……。しかも五羽もいるとは。今日は鳥鍋だな』
土方 『おとぎ話の主役にあるまじき反応すんじゃねえよ!』
沖田 『そもそも、風間に人の情を期待すること自体間違ってるけどね』
風間 『ふ。何やら哀れな鶴どもが遠吠えをしているようだな。
どことなく人の言葉にも聞こえるが、気のせいに違いない』
原田 『てめえ、色々わかってやってんだろ……』
風間 『というか、これはいったい何のつもりだ?鶴と言えば優美さの象徴。
おまえたちのような田舎侍が鶴とは滑稽にも程がある。
田舎者は田舎者らしく、野良犬の真似事でもしたらどうだ?』
藤堂 『こ、この野郎……人が罠に掛かってるからって好き勝手言いやがって……!』
斎藤 『この場合、人ではなく鳥だがな』
チャキ(刀を構える
土方 『おい総司、おまえも落ち着け!いきなり刀なんて抜くんじゃねえ!』
沖田 『何言ってるんですか土方さん。鶴が刀なんて持ってるはずないじゃないですか。
これはクチバシですよ、クチバシ』
土方 『そんな物騒な鈍色のクチバシはこの世にねえよ!』
原田 『とにかく風間、いいから俺たちを助けろって。後で恩は返してやるから!』
風間 『恩返しなど期待していないが……。まあいいだろう。
笑わせてもらったことだし、あまりにも哀れだから助けてやることにしよう』
沖田 『うわ。なんかすごく助けて欲しくないんだけど』
斎藤 『我慢しろ総司。これも任務だ』
風間 『何か言ったか? ……まあいい。ではそこを動くな。動くなよ、背を向ければ斬る』
チャキ(刀を構える
土方 『……おい……。ちょっと待て、なんで刀を構えてんだよ』
沖田 『僕たちが身動き取れないのをいいことに、ここで斬るつもりとか?さすが鬼は卑怯だなあ』
風間 『おまえらと一緒にするな。きちんと罠だけを斬ればいいのだろう?』
藤堂 『罠だけって、おまえちゃんとできんのかよ?』
風間 『ふん……無駄な心配だ。俺の剣に間違いなどない』
チャキ(刀を構える
風間 『──では行くぞ!』
ザシュッ
斉藤 『む……言うだけはあるな。罠のみを一刀両断したか』
沖田 『剣の腕だけは立つんだよね、剣の腕だけは』
原田 『うお!おい、今少しかすったじゃねえか!』
土方 『罠は斬れたが、ギリギリだったぞ……』
ザシュッ
藤堂 『ん?おおい!?斬れてる斬れてる!オレは斬れてんぞ!?』
風間 『むう。多少余計なものまで斬ってしまったが、まあいい』
藤堂 『よくねえよ!何が心配無用だ!もろにザックリ行ったじゃねーか!』
風間 『俺の剣に間違いなどない』
藤堂 『嘘つけ!今まさに間違っ……いや待て、
今ので間違ってねえってことは、まさかおまえ、わざとオレを──(ムグっ』
原田 『平助! 我慢しろ、かすり傷だ死にゃあしねえ!』
藤堂 『かすり傷って、めちゃくちゃ血ぃ出てんのに!?』
沖田 『あーあぁ、相変わらず大げさだね』
斎藤 『石田散薬の準備がある。今は我慢しろ』
風間 『さて、これでいいだろう。恩返しなど期待していないが、
せいぜい、助けてやったことを這いつくばって感謝するのだな』
スタスタスタ・・・
土方 『……よし、風間は行ったか。とりあえずは成功だな』
藤堂 『成功か? 成功なのか? 本当に成功なのか、土方さん?』
斎藤 『罠に掛かった鶴を装いわざと助けられ、恩を返しに行く振りをして奴の家に忍び込む……。
さすがは監察方の考えた作戦だ。隙がない』
原田 『こんな作戦を考えたのはどこのどいつかと思ったら、山崎か……』
沖田 『というか、山崎君も面倒な作戦立てたよね。
そんな回りくどい真似しなくても、普通に襲っちゃえばいいのに』
斎藤 『そういうわけにはいかないだろう。そもそもこの作戦は、
俺たち鳥の世を支配している鳥川幕府の密命を受けてのことだからな』
原田 『ああ、確か「これまで数多くの鳥を狩ってきた風間を成敗せよ」とかいう話だったか?』
藤堂 『……つーか、鳥川幕府……って(ムグっ」
原田 『平助、今回はそういう設定だ。スマン、疑問は持つな』
土方 『……ごほん。斎藤の言う通りだ。だから今回はただ風間を斬るんじゃなく、
他の猟師への見せしめの意味を込めて、奴をこらしめて……』
沖田 『そういう難しい話はいいですって。もっとわかりやすく言ってくれません?』
土方 『チッ……うーん……楽には殺してやらねえぜ?」
沖田 『なんだ土方さん、最初からそう言ってくれればいいのに。
ようするに風間を生かさず殺さずいじめればいいんですね?』
斎藤 『……わかってはいたが、総司は色々な意味で危険人物だな。今更だが』
原田 『と、とにかくだ。次はあいつの家に押しかけるってことでいいんだよな?』
土方 『ああ、その通りだ。じゃあ早速さっきの礼をしに行くとするか。
……そう、お礼参りをしにな……』